編プロ社長の頭の中

ものがたりカンパニーHEWの代表によるちょっとためになる話

編プロ社長が皆さんの疑問に答えます【第1回】編プロで自分の好きなものは書けない?

<この記事は【いとわズ】からの転載です>

 

マスコミ業界に関する質問や相談に、編集プロダクションHEWの社長がお答えするコーナー。

第1回は、ライター志望の学生さんからのご相談です。

 

Q

ライターに憧れている学生です。将来は単行本を出したり、トークイベントに出演するようなライターになりたいのですが、その場合、編プロに入るのは回り道ですか? 文章を書く仕事はできても、自分の好きなものは書けなくなるんじゃないかと不安です。ちなみに文章でお金をもらう仕事は未経験です。

 

皆さん、「編集プロダクション」ってご存知なんですかね?
ご存知の方はどんなイメージをお持ちなんでしょうか。よく言われるのは、とにかくひたすら書いて書いて書きまくる集団というもの。実際、終電なんて当たり前、なんて話も聞いたりします。


編プロは、雑誌の編集部や出版社など、決まった相手と長く仕事をすることが多いようで、安定して仕事が来るぶん仕事内容は専門的になっていくケースもあります。「医療」とか「車」とか「旅行」とか、ジャンルに特化した編プロもありますよね。


で、質問の答えですが、僕は編プロは回り道どころか王道だと思います。
どんなことであれ、書く仕事に囲まれている状況なんて編プロ以外では考えられません。「仕事として書く」、それが当たり前にできるのは非常に恵まれた環境なんです。


今、業界には“自称ライター”が溢れています。
ほんと、腐るほどいます。

だいたいね、「書く」だけなら誰でもできるんですよ。ブログやSNSで。ミニコミで。それはそれで意味のあることだし、表現手段として価値のあるものですが、それを仕事にできるかどうかがプロとアマチュアの差でした。

でも今は、ネット媒体が乱立し、既存の媒体も記事本数を増やしたことで、そういったプロ未満の人にも書くチャンスが回ってくる時代。SNSが生活の一部になり、ポータルがタイムライン化したことで、“ネット記事”は完全に消耗品になっています。

“1本500円で請け負う大学生・主婦ライター”なんて話を耳にすることはありますが、あれは本当にある話。クラウドソーシングサービスにはそんな仕事がいくらでも転がっています。ライターを名乗る人間があまりにも増えたので、僕らはもう自らをライターと名乗るのをやめたくなっているくらいです。


だからこそ、きちんとした編プロで仕事をする意味がある。
「仕事として書く」環境は、その編プロが培ってきた実績と信頼があればこそです。編プロで当たり前のように用意されている仕事だって、そこにどれだけ営業力が費やされているか。
僕らは編集者もやっていますが、編集者としてライターを探すときに、書いたものを見ただけで知らない個人のライターに声をかけるなんてことは絶対にありません。いいブログを書いていれば誰かが見つけてくれるなんてのは夢のまた夢。もちろんそんな人も世の中に何人かはいますが、その何人かに入る自信がないのであれば、編プロに入ることは決して遠回りではありません。


また、ライティングについて学べるのも編プロの大きなメリットです。
好きなことを好きなように書くのは誰にでもできますが、お金になる文章を書くのは誰にでもできることではありません。
周りに教えてくれる人もいるだろうし、なにより人が見ている場で書くということ自体が研鑽といってもいいでしょう。自分のブログで書くのと、Yahoo!配信記事を書くのでは、求められる質もスピードも違います。プレッシャーも緊張感も違います。


「編プロだと自分の好きなことが書けない」なんて、役者が「劇団に入ると自分の好きな演技ができない」と言ってるようなものです。
まずは需要があるものを書く力をつけるというのは、決して回り道ではありません。むしろ、自分の幅を広げるチャンスではないでしょうか。
編プロを利用して、力をつけ、評価を受け、自分がやりたいことをやりやすい環境を作っていく。トークイベントのオファーを待つのは、それからでも遅くありませんよ。

 

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